13、これで本当にさようなら

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 川喜多さんはひと呼吸を置いて冷静に告げる。 「では、結論が出たところで慰謝料の話に移りましょう」  優斗とその両親は「は!?」という目で彼に注目した。 「当然です。紗那さんは不貞による婚約破棄とパートナーからの暴言で精神的苦痛を受けたのですから相応の慰謝料をいただくことになります」  呆気にとられている優斗と優斗母をよそに、優斗父が渋い表情で訊ねた。 「いくらだ?」 「100万です」  川喜多さんの返答に私を含め全員が「ええっ!?」と大声を上げた。  そんな高額だなんて聞いてない。たしか相場は30万くらいだって言っていなかったっけ? 妊娠中とかDVで怪我をしたとかなら100万相当もらえるとは聞いていたけど、さすがに法外な金額ではないだろうか?  これについては優斗父が反論する。 「そんな金が払えるわけないだろう。減額しろ!」 「では80万でいかがでしょう?」 「高すぎる! たかが婚約破棄だろ!」 「では調停にしますか?」 「そんな恥さらしなことができるか!」 「では和解に向けて話し合いましょう」  優斗父は再び黙ってしまった。
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