13、これで本当にさようなら

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 結局、慰謝料は30万の請求で落ち着いた。事前に話し合って決めておいた通りだ。もしかして、優斗父が渋ると思ってわざと高めに提示したのだろうか。  そんな疑問を口にする間もなく、川喜多さんが鞄から一枚の紙きれを取り出して優斗に見せた。 「あなたにはここに書かれた文面を厳守していただきたく思います。つきましては目を通していただいたあとサインをしてください」  その文面を見た優斗はぎょっとした目で川喜多さんを睨んだ。 「何だよこれ。紗那に一切近づくなとか、同じ会社なのにそんなことができるわけないだろ?」 「あなたが彼女を見かけたら距離を置いてください。話しかけることは禁止です」 「なんで俺がそんなことしなきゃいけねーんだよ!」 「破るなら警察に連絡することになりますが?」  優斗は「くそっ!」と声を上げてやけになったようにくしゃくしゃとサインをした。  接近禁止命令ほどではないけど、ある程度の効力はあるだろう。  私は少しばかり安堵した。
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