1、私はただの家政婦ですか

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 納品したモノに問題があったり、クレームがあると調査をして報告書をまとめる。原因を探るための膨大な量のデータ収集と細かい分析が必要で、ときには深夜に及ぶこともある。  同じ年齢の女性の平均年収よりも高めだが、その分心身ともに疲弊する。  それでも仕事が終われば買い物をして帰り、夕食を作って明日のお弁当の準備をして、それからお風呂のあとに洗濯をまわして、浴室乾燥機能で衣類を乾かす。  翌朝はお弁当作りと朝食を用意して優斗を起こす。  それから急いでメイクをして出社する。  これをもう3年も続けている。 「だから、同居すれば母さんが家事も料理もしてくれるんだって」  優斗は相変わらず夕食のときにそんな話を持ち出した。  同居は嫌だとはっきり言ったのに、まったく伝わっていない。 「新婚のうちはふたりで暮らしたいのよ」 「は? ちょっと意味わかんないんだけど。もうずっとふたりで暮らしてきたじゃん」  私はおかずの鯖の塩焼きの骨を丁寧に取りながらぼそりと答える。 「同棲と結婚は違うでしょ?」 「俺からすれば変わんないよ」  優斗は味噌汁を飲み干すと箸を置いた。 「優斗は何もしないからね」 「何だよ、その言い方。棘があるなあ」 「本当のことでしょ? 共働きで家賃折半なのに、どうして家事ぜんぶ私なの?」 「またそれ? いい加減聞き飽きたよ。だから同居しようって言っているんじゃないか」  優斗はあからさまに深いため息をついた。
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