13、これで本当にさようなら

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「ふざけるな! そんな勝手なことは許さん」 「それなら早く奥さまをお止めしたらいかがですか?」  優斗父は、泣きながら固まる優斗母から包丁を取り上げるとそれを畳に放り捨てた。  優斗母は「紗那さんのせいよ!」と畳に座り込んで泣いた。 「本当に君のせいでうちはとんでもない被害をこうむった。こちらが慰謝料をもらいたいくらいだ」  優斗父は私を睨みつけながらそう言った。  めちゃくちゃな言い分だ。  しかし川喜多さんが冷静に告げる。 「いいですよ? 訴えていただいても。こちらはいくらでも迎え撃つ準備はしておきますので」  優斗父は「くそっ」と言い捨て、優斗本人はこの状況が理解できないのか放心状態になっていた。  川喜多さんは優斗のサイン入りの書類をすべて鞄に仕舞い込むと、私に声をかけた。 「では紗那さん、帰りましょう。我々の交渉は終わりです。あとはご家族で話し合われることでしょう」  すると優斗がハッとした表情で口を挟んだ。 「待てよ。俺の家をめちゃくちゃにして、責任取れよ」
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