14、一難去ってまた

3/15
前へ
/287ページ
次へ
「みんな暇なのかしら?」 「他人の噂話って話題のネタになるからねえ。あんまり仲良くない同僚とも噂話をネタにすると盛り上がるしね」 「私をネタにしないでほしいわ」  私がビールジョッキを片手に持っていると、美玲が自分のグラスをかちんと当てて言った。 「とりあえずお疲れ! 無事に山内くんから解放されてよかったよ」 「ありがと」 「山内くん、たぶん異動になると思うんだよね。そんな話をちらっと聞いたの」 「美玲、詳しいね。どこに異動するんだろ?」 「系列会社に出向って話よ。といっても何かのプロジェクトを任されるわけじゃなくて、今より作業量の少ない部署なんですって」 「それって左遷?」 「まあ、本人やる気ないし、遅刻ばかりで最近は休みがちだしね」 「……そっか」  正直、優斗にここまでダメージを受けてほしいわけじゃなかった。ただ無事に別れられればそれでよかったのに、ちょっと複雑な気分。 「紗那が気にすることなんてないわよ。山内くんが仕事できないのは今に始まったことじゃないのよ」 「そうなんだ?」 「あなた知らなかったの? あの子、結構周囲に迷惑かけてたのよ。だから、彼の左遷は紗那の件とは別物と思えばいいわ」 「ありがとう」  もういいんだ。彼のことで悩まなくても。  あの家のことも少し気になっていたけど、もう関係ない。  私はやっと解放されたんだ。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6350人が本棚に入れています
本棚に追加