1、私はただの家政婦ですか

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 けれど、ここで話を終わらせてはいけない。  また、ずるずると問題を先延ばしにしてしまう。 「話し合おうよ。結婚後のことをちゃんと」 「俺はずっと話してるよ」 「それ、優斗の家の都合じゃない。当事者は私たちふたりなのに、私のことは置き去りだよね?」  優斗はさっさと食べ終わると席を立ち、食器をそのまま残してリビングのソファに寝転んだ。 「まだ話は終わってないよ」 「あのさ、今日すっごい疲れてるんだよ。仕事で疲れてるのに家でもぐちぐち言われたら気が滅入るよ」 「何それ……私だって」 「仕事してるって? 紗那は女だろ? 男とは責任の重さが違うんだよ」  さすがにそれは腹が立ち、言い返そうとしたら優斗はその隙を与えてくれなかった。 「紗那は子どもができたら休むだろ? でも俺はずっと働くんだよ。家族を支えなきゃいけないんだから。それが俺の役目なの。俺の尊敬する上司がそう言っていたんだ」 「その上司、離婚したよね?」  優斗は「うるさいな」とぼそりと言うとそのまま寝室に引っ込んでしまった。  都合が悪くなると逃げる癖。  まともに話し合いもできないまま、時間だけが過ぎていった。
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