14、一難去ってまた

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 店を出たのは21時過ぎた頃だった。美玲がスマホを見つめながら「まだ時間早いね」と言った。  確かに明日は休みだから、もう少し遊んでいたい気分はある。 「ねえ紗那、酔い覚ましにコーヒー飲まない? デザートも一緒に」 「ふふっ、いいね。パフェが食べたい」 「やだ、あなたまだ食べる気?」 「食欲わいちゃって」 「いいことよ。いっぱい食べて全部忘れよ」  もうぜんぶ終わったんだ。社内で多少噂になっても、時間が解決してくれる。私はもう深く悩むことはないんだと、思っていた。  だけど、私はこの日、とんでもないものを見てしまった。  視線の先にちらりと見知った人物がいた。一瞬目をそらしたあと、驚いて二度見してしまった。  きらびやかな路地裏に入っていくのは千秋さんとひとりの女性。  目を疑って何度も確認するように凝視したけど、高身長ですらりとした体格に間近で何度も見た顔は間違えるわけがない。  そして、相手の女性は乃愛だった。
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