14、一難去ってまた

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 ざわつく繁華街はきらびやかで、まるで私たちだけ別世界にいるように固まっていた。やがて美玲が私に顔を向けて、静かに疑問を口にした。 「男女が揃ってホテルに入って、他に何の理由があるっていうの?」 「……うん」  私はまだ信じれない。だけど、意外と驚くべきことでもないのかもしれないと冷静に頭が働いている。  だって彼が付き合っていない女とそういう関係になれることは、私自身がよく知っているから。  そっか。そっかあ……。  千秋さん、誰でも抱けるんだ。  5年間付き合ってる人がいないって言ってたのは、特定の恋人がいないってだけで、ちゃんとそういう相手はいたんだ。 「別にいいんじゃないかな」 「え? 紗那あんた何言って……」 「だって、恋人とは限らないよ。割り切った関係かもしれないでしょ。私との交際宣言だって演技だし」  そう、あれは優斗から守ってくれるためにわざとそう言っただけ。 「恋人がいないなら浮気にもならないし、問題ないよ」 「紗那、本気で言ってる?」 「……うん」  なんとか笑顔を取り繕って言った。今が夜でよかった。私の顔色はあんまり見えないだろうから。
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