14、一難去ってまた

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 あまりにも動揺しすぎて、私はもう何も考えたくなかった。 「ごめん、ちょっと疲れちゃった。パフェはまた今度でもいい?」 「紗那、あんたやっぱり無理して……」 「ううん、大丈夫。ごめんね、美玲」 「タクシー呼ぶ?」 「平気。すぐ電車に乗るから」  私は心配してくれる美玲を残して、その場を去った。  千秋さんと乃愛のいる空間から一刻も早く逃げたかったから。  混雑した電車内で立ったまま、私は外の景色を眺めてふと思った。  そういえば私は彼と何回寝たっけ?  あれは眠れない私への添い寝のつもりだったのかもしれない。  ああ……私、バカだなあ。  少しでも、自分が彼の特別になれた気になっていた。  自惚れてしまった。  やっぱり、付き合う前でよかった。  大丈夫。これからは、ひとりでやっていける。  千秋さんは悪くない。私をいっぱい元気づけてくれた。  だから、これ以上を望んではだめ。  それなのに、私は頭の中でどうにか彼を責める理由を探ろうとしている。  よりによって、どうして乃愛なの!?
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