14、一難去ってまた

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 家にいても憂鬱な気分だった。食欲がなくてほとんど食べていない。  たまに千秋さんからメッセージが来て食事の誘いがあるけど忙しいからと断っている。  千秋さんに、乃愛とはどんな関係なのか訊きたい気持ちと、知りたくない気持ちのあいだで私は揺れている。  もし本当に遊び相手だったら、私は彼のことをこれ以上受け入れられない。   「引っ越そうかな」  せっかく格安で貸してもらったマンションだけど、今は彼のそばにいたくない。  食事もせず、ただ床に腰を下ろしてぼうっとしていたら、インターフォンが鳴った。億劫な気持ちで確認したら千秋さんが立っていて、居留守を使おうか迷ったあげく、私はおずおずと顔を出した。 「こんばんは。えっと、何か……?」 「ああ。しばらく出張だから会っておこうかなと」 「そうですか。わざわざどうも」  私がそっけない態度で応じたせいか、千秋さんは少し遠慮がちに発言した。 「どうしたの? 元気ないね」  私は彼のその発言に少々苛立ってしまった。  誰のせいだと、思って……。 「そうですか? 元気ですよ」  私はどうにか笑顔で答えた。だけど千秋さんは怪訝な表情をしている。 「少しやつれていない?」  彼が手を伸ばしてきて私に触れようとしたので、思いきりその手を振り払ってしまった。
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