1、私はただの家政婦ですか

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「あのね、優斗。一応私たちもいい大人だし、考えなしに突っ走るのはよくないと思うんだよ。結婚しても仕事を続けていいって優斗が私に言ってくれたんだよ?」  不貞腐れて背中を向けた優斗に向かって、なるべく穏便に話をする。 「私の仕事のこと理解してくれているよね。だったら、そういうことも考えてほしいなって」  優斗は完全に無視している。  私は呆れぎみにため息を洩らした。  どうすればきちんと話し合いができるんだろう。  やっぱりこの結婚は無理なのかな。  プロポーズのことを思い出した。  普段はだらだらしてばかりの優斗が、めずらしくフォーマルの格好でホテルのディナーを予約してくれて、夜景が見える場所で「結婚しよう」と言ってくれた。  ほんの少し前のことなのに、なつかしく思えてしまうほど、今は遠い記憶のようだ。  やだ。ほんとにマリッジブルーなのかな。  うっかり涙ぐんでしまったとき、優斗がぼそりと呟いた。 「やっぱ素直に応じてくれる女はいいよな」  えっ……何言ってるの?  優斗はすぐに寝息を立て始めた。  私の胸中は不安と疑問でぐるぐる渦巻いている。  いったいダレと比べたの!?
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