2、彼の裏切りと女の匂わせ

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 優斗が出ていったあと、しばらくして義母から電話がかかってきた。  虚ろな気分でしぶしぶ電話に出ると、すぐさま非難の声が飛んできた。 『紗那さん、優斗から聞いたわ。喧嘩したんですって?』  どうしてあなたがそんなことを知っているの? 『優斗は仕事で疲れているのよ。あなたはそれを支えなきゃいけないでしょう?』  何それ。私のほうが長時間働いてるんですけど!?    なんなら給料も私のほうが高いんですけど!? 『最近の女性は強いって聞くけど、男を立てることを覚えなきゃだめよ。あたしの頃はね、姑に言われることはきちんと聞いて、夫の少しあとを歩くようにしてね……』  60代のあなたとは時代が違うんですよ。 「……すみません。時間がないので切りますね」 『え? ちょっと紗那さん? あなたね……』  ブツッとこちらから通話を終了させた。  私は今まで何をしてきたのだろう。  優斗が喜んでくれると思って、疲れていても栄養のある食事を準備して、家も綺麗に保って、まわりが結婚する中ずるずると同棲を続けてきて。  ようやく結婚できると思ったら義両親との同居が条件。  あげくに優斗の不貞とか。   「あはは……バッカみたい……」  そう。バカなのは私だ。  こんな男とその母親の機嫌を取り続けてきたのだから。    ぽたぽたと涙がこぼれ落ちた。  なんて無様なんだろうと自分に呆れた。  この結婚に幸せなんてあるはずがない。  気づけただけでもよかったのに、この5年間を思うと、あまりにも惨めだった。
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