3、見知らぬ男と過ごした夜

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 23時前に駅前の居酒屋通りをぶらぶら歩いた。  そういえば、優斗と同棲してからはこんな遅くに出歩いたことはほとんどない。  毎日仕事が終わったら急いで帰宅して家事をしていたから。  結婚する準備だと思ってやってきたけれど。  優斗は何も変わらず好きに飲みに行ったりしていたな。 「今さら別れるとか」  親に何と説明すればいいだろう。  父は何も言わないだろうけど、母はきっと怒るだろう。  母にとって子どもは兄だけ。  私はただの世話人だ。  いつだって兄が特別。  私が進学するときも女がいい大学に行くなんてありえないとか、就職するときも女だから事務にしろとか、あげくまだ結婚しないのかとか。  毒親と呼べるレベルなのかわからないけれど、これ以上実家にいたらノイローゼになると思い、優斗と同棲することにした。  結婚が決まったとき、父は普通におめでとうと言ってくれた。  でも母はようやく出ていってくれると安堵していた。  婚約破棄なんて言ったら、勘当されるかもしれない。 「まずは住むところを探さないと……」  ほとんど頭が働かない状態で、たまに同僚と一緒に行くバーにふらりと入った。
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