3、見知らぬ男と過ごした夜

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「いらっしゃいませ~」  いつものバーテンダーのお兄さんが笑顔で迎えてくれて、わざわざカウンター席へどうぞと手で示してくれた。 「おひとりですか?」 「はい。たまたま通りかかったらすごく飲みたくなったので」 「ありがとうございます、ご注文は何になさいますか?」 「すっごく強いお酒をください」 「かしこまりました」  バーテンダーさんはすらりと背が高く、手さばきも優雅で素晴らしい。  いつも端のほうのテーブル席でおしゃべりばかりしていたからちゃんと見たことがなかったけど、今日は見入ってしまった。  彼は脚の長い三角形のグラスに注がれたお酒を差し出して、少し低い声で言った。 「マティーニでございます」 「わっ……」  飲んだことないけど名前だけ知ってる。  初めてのお酒だからドキドキしたけど、ひと口飲んでなんだか辛いけど今の気分にはぴったりだった。  次は別のカクテルを注文し、私はテーブルの上に置いたスマホの画面をスクロールした。  見なければいいのにNoaの投稿に目を走らせてしまう。 「素敵な彼氏ですね♡」だって。  それ、私の彼氏なんだけど……。 【イケナイコトするのドキドキするよね♪】  最初は乃愛が知らずに優斗と関係を持ったのかと思ったけど、そうでもないなこれは。  匂わせすぎ。 「いいのよ別に。くれてやるわ、そんなやつ」  ぐいっと飲み干したら、ふわっとした感覚になった。
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