3、見知らぬ男と過ごした夜

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「そんなに速いペースで飲むと酔いがまわるよ」  見知らぬ男に声をかけられた。  他に席が空いているのにわざわざ私のとなりに座っている。  なるほど下心ありありですね。 「大丈夫です。お気になさらず」  そっけなく返すと意外な返答をされた。 「気になるなあ」 「はっ……?」 「こんなに綺麗な女性がこんな深夜にひとりなんて何かあったとしか思えない」  男はカウンターテーブルに肘をついて両手の指先を組んでいる。  そしてにこやかな笑顔で私のほうをじっと見ている。  ビジュアル的には最高だけど、私の【キケンシグナル】が頭の中に響きわたる。 「まあ、ありましたけど……」 「彼氏に振られたの?」 「っ……!」  振られたわけじゃない。  これから私が振ってやるつもりだ。 「だいたいこんなところでやけ酒している女性は彼氏と何かあったか、仕事で失敗したか、選択肢は限られてくるよね」 「そうですね。で、あなたはなぜおひとりでこんなところに?」 「今夜、ここに来なければならないような気がしたんだ」  はい、やばい奴認定。  まるでここにくれば運命の人と出会えるかのような言い方。  口説き方のひとつですよね。 「一緒に飲まない?」  私の【キケンシグナル】がぐっと急上昇したけれど。 「いいですよ」  簡単に陥落した。
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