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「そんなに速いペースで飲むと酔いがまわるよ」
見知らぬ男が話しかけてきた。
他に席が空いているのにわざわざ私のとなりに座っているということは下心ありありですね。
「大丈夫です。お気になさらず」
そっけなく返すと意外な返答をされた。
「気になるなあ」
「はっ……?」
「こんなに綺麗な女性がこんな深夜にひとりなんて何かあったとしか思えない」
カウンターテーブルに肘をついて両手の指先を組んでいる男は私のほうを見てにっこり笑った。
悪くない。ビジュアル的には最高だ。
けれど、傷心な上に酔っているから10割増しに見えるだけかもしれない。
「まあ、ありましたけど……」
じっと見つめられるから少々警戒しつつ、目線をそらしながら言った。
すると男は待ってましたとばかりに返答。
「彼氏に振られたの?」
「っ……!」
ぎくりとしたが、振られたわけではない。むしろ、これから私が振ってやるつもりなのだから。
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