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しかし、酔った勢いでホテルにほいほいついて行った私が悪い。
あのとき何もなかったのが不思議なくらいだ。
「君も期待してついて来たんだろう? でも彼氏と別れていないと言っていたから遠慮しておいたんだよ」
何それ、理性しっかり保った俺すげーってやつですかね。
「あ、ありがとうございます……おかげで不貞になりませんでした」
「別れるときに少しでもこちらに非があると面倒だろう?」
「……どうして、そこまでしてくれるんですか? ハンカチ拾ってもらったの私のほうなのに」
月見里さんはオートロックを解除して私を中に招き入れる。
エレベーターの前で彼は言った。
「俺、誘った女に断られたことがないんだ」
私は目が点になった。
いったい何度、彼の言動に絶句したことだろう。
エレベーターが1階に到着し、ドアが開いた瞬間に彼は私に中へどうぞと促した。
「月見里さんは女好きなんですね」
「そんなことないよ」
「だってさっき……」
「飲みに誘って断られたことはないっていう意味で言ったけど」
「えっ……?」
彼はわざわざ斜め上から覗き込むようにして私に顔を近づけて言った。
「いったい何のことだと思ったの?」
だめだ。完全に手のひらの上で転がされている。
ああ、そうか。こんなだから私はろくでもない男に引っかかるんだきっと。
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