4、引っ越し先を探します

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「気に入った?」 「このレベルで気に入らない人がいたら見てみたいです」 「じゃあ、決まりだね」 「でもひとり暮らしでこの広さはちょっと落ち着かないかも」 「大丈夫、慣れるから」  彼はにっこり微笑んでそう言った。  まあ、たしかに住めば都と言うけれど、気になるのはお値段だ。 「家賃はおいくらですか?」 「10万くらいでどうだろう?」 「あなた私のことバカだと思ってますか? さすがにそれはないでしょ」 「高い? 交渉次第でもっと安くしてもらうことはできるけど」 「逆ですよ!」  都内+駅近+新築+階数+端っこ+広さ。  この条件を考えたら10万はありえない。 「安さに何か理由があるんですか? この部屋で何かよからぬことが起こったとか」 「違う違う。俺の従姉が購入した部屋なんだけど、すぐに結婚して別に新居を構えてしまったんだ。手放すのも惜しいということだから、もし君が住んでくれるなら、格安で貸していいと言ってる」 「えっ……」  新居があるのに別にマンションを持つことができるなんてどんなお金持ちですか? 「あの、こんな好条件ならいくらでも借りたい人がいると思うんですけど……」 「見ず知らずの人には貸したくないと言っている。だから、気にしなくていい」 「私も見ず知らずの人だと思うんですが……」 「大丈夫。俺の彼女だと伝えているから」 「……はい?」  今、なんて……!?
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