5、 マザコン彼氏に別れを告げた夜

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 金曜日の夜、私はついに別れを切り出した。  すると優斗はぽかんと口を開けたまま、しばらく放心状態だった。 「は? 何言ってんの? 最近、紗那は疲れてんだよ。冷静になれよ」 「私は冷静だよ。優斗とは結婚について価値観が違うと思って、このままじゃ無理だって思ったの」 「価値観? 紗那のわがままだろ?」 「なんでそうなるの? ちゃんと話を聞いて」 「だってそうだろ? 俺は何も悪くないよ?」  やば……反論する気力が失せてきた。  5年も一緒にいて、なんでおかしいと思わなかったんだろう?  いや、きっとそれは【カレシフィルター】がかかっていたんだ。  別の男とまともな話をしていたら、完全にそのフィルターを取り払うことができた。  これは月見里さんに感謝すべきところだと思う。 「ねえ、結婚ってお互いのことを扶助するものだよ。憲法にも記されているよ。今のままじゃ私に負担がかかるばかりでしょ?」 「めんどくせぇなあ。そんなんだから俺の機嫌が悪くなるんだろ。紗那には男への気遣いってものがないんだよ。フツーの女は男が気分よくなるように努力するもんだろ?」  は!?  なんで私が毎回あんたの気分をよくしなきゃいけないの?
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