5、 マザコン彼氏に別れを告げた夜

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「私が知らないとでも思ったの?」 「誰だよそれ、知らねーよ」 「この手の傷は優斗のものだよ。私が手当てしたからよくわかる」  優斗は一瞬怯んだが、すぐに笑って言った。 「会社の同僚とメシくらい行くだろ? 紗那だってよく男と行ってるじゃないか」 「じゃあなんで今しらばっくれたの? 最初からそう言えばいいじゃない」 「あーもう! とにかく、婚約破棄なら慰謝料だ! 俺は絶対に譲らないからな!」  だめだ、こいつ。  もう、どうでもいいや。  私はスマホに保存した乃愛とのやりとりを撮った写真を優斗に見せつけた。 【はやくのあのことだきしめてー】 【会いたいょ♡】 【すきすきすきーだょ♡♡♡】  優斗はわかりやすいくらい顔面蒼白になり、口を開けたまま硬直した。 「どう見ても同僚との会話じゃないよね?」 「お前、勝手に俺のスマホ見たのかよ。最低だな!」 「どっちが? ねえ、どっちが最低なの?」 「お前だよ! そういう卑怯なことをするお前は品のないクズだ!」 「……もういいわ。どっちがどうとか、そんなこと話したくないの。別れましょう」  そう言うと、優斗は鼻で笑った。 「お前、俺と別れたら行くとこないだろ? 実家とは疎遠だしな」  痛いところをついてくる。  こんなに卑怯な人間だったんだ。  ほんと私って男を見る目がないんだな。
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