5、 マザコン彼氏に別れを告げた夜

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「まさか、こんなに早く出てくるとは思わなかった」  突然の呼び出しなのに来てくれた月見里さんは、落ち着いているが少々驚いていた。 「ですよね。鍵の受け渡しは来週ですもんね。それまでにきちんと整理するために相手に別れを告げたのですが、少々ゴタゴタがありまして」 「あちらが別れを渋ったの?」 「うーん、そんな感じではないですね。出ていけって言われちゃって」 「家賃の半分は君が出してるんだろ?」 「ええ、でも、話が通じなくて……」  まるで宇宙人と会話しているような感覚だった。  月見里さんは手を伸ばして、私の髪をさらっと撫でるように触った。  どきりとして肩が震えた。 「ああ、ごめん。頬が腫れてるから。殴られたのか?」 「まあ、ちょっと……軽くばちんって」  避けたから軽くすんだけど、ズレたせいで頬より耳のほうが痛い。  彼があまりにも私の頬と耳を撫でるから、私は少し身を引いた。 「ごめん、痛かった?」 「いえ、大丈夫です」  あんまり認めたくないけど、意識してみるとこの人本当にかっこいいんだよなあ。  足なっがいし、ドイツ人みたいにスタイルいいし(180~190センチ) 「ああ、そうだ。飴ちゃんあげよう」  彼はポケットから棒付きキャンディーを取り出して私にくれた。  なんですかそれ。泣いてる子どもをなだめるみたいな。 「あ、ありがとうございます」  複雑だけどなんだか嬉しい。
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