5、 マザコン彼氏に別れを告げた夜

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 肉を食べに行くと聞いていたから、てっきり焼肉屋だと思っていたのに、連れてこられた場所は高級感の漂うレストランだった。  彼はスーツだからいいけど、私は普段着なのに!!! 「こ、こんな店に来るなんて聞いてません」 「そう? 肉を食うって言ったよね?」  月見里さんは私の横に座って真顔で淡々と言った。  そして目の前には広い鉄板と、肉を焼いている料理人。  そうか。月見里さんの肉を食べるというのは自分で焼くのではなく焼いてもらう店だったのね。  わかった。きっと私とは価値観の合わない人だ。  そもそもあの高そうなマンションを親戚が所有していること自体、もう次元の違う人だってわかっていたはず。  いや、そもそもエリート組だと知ったときからわかっていた。  今さらながら、こうしてとなりに座っているだけで恐れ多い。 「アワビも食べるよね?」 「えっ……」 「もしかして嫌い?」 「まさか」 「じゃあ、このコースでいいか」  彼が店員にオーダーすると肉の焼き加減を訊かれた。 「俺はレアでいいんだけど、君は?」 「も、もう少し焼いてください」 「じゃあミディアムで」  彼は流れるようにオーダーを済ませた。  私は自分の置かれた状況がいまいち理解できない。
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