5、 マザコン彼氏に別れを告げた夜

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 やばい。コースの値段を見てなかった。  さすがにアワビ+ステーキのコースだから最低1万はするだろう。  あと、店の場所があまりにも都会すぎる。場所代考えたら2万、いや3万するかも……。  ちょっとお財布事情が厳しい。  今後のことを考えたらあんまり贅沢できないんだけど。  私がガチガチに固まっていると月見里さんが声をかけてきた。 「何か心配事? ここ常連だから味は保証するよ」 「い、いえ……そういうことじゃなくて、結構その……お値段が」 「気にしなくていいよ」 「気にしますよ」 「どうして? 君が払うわけでもないのに」 「え? それ、余計に気になりますよ。だって私、こんなことしてもらう義理なんてないですし」  月見里さんは少し目をそらして考えて、それから私に笑顔を向けた。 「今晩の食事に付き合ってくれたお礼」 「え? ちょっと意味がよく……」  わからない。  どう考えても私が助けてもらったと思うんだけど。 「俺、結構稼いでるから気にしなくていいよ」 「そ、それは……」  どう捉えたらいいんだ。  あなたが稼いでいることくらいわかりますよ。  でも、なんかそうじゃないんだけど。  ふと思う。  優斗とは別の意味で話が通じない人かもしれない。  いや、もしかしたらわざとなのかな?  私がとなりで彼の横顔をじっと見つめていたら、彼はドリンクメニューを片手に声をかけてきた。 「赤ワインにする?」 「なんでもいいです」 「じゃあ、それで」  彼氏と別れた日の夜に、なぜか会社の人とワインを飲んで肉を食べました。  
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