5、 マザコン彼氏に別れを告げた夜

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 ほんのり酔った状態で店を出ると風が涼しくて気持ちよかった。 「ごちそうさまでした」 「元気が出てよかった」 「はい。お気遣いありがとうございます」  私が目を腫らしていたから食事に誘ってくれたんだよね。  ありがたい、けれどこれからどうしよう。  とりあえずスマホでビジネスホテルを検索しようとしたら、何件もの着信通知とメッセージの通知にどきりとした。  すべて優斗からだ。  開くのが怖いけど、勇気を出して見てみることにした。 【お前が出ていったんだからな】 【責任もって慰謝料払えよ】 【会社には紗那が原因で別れたと言っておく】 【このわがまま女!】 【お前みたいな女はこっちから願い下げだ】  鼓動が速まって冷や汗が出てきた。  私が硬直していると、月見里さんが声をかけてきた。 「どうしたの?」 「あ、あの……」 「彼氏?」 「ええ、まあ」 「見せて」  彼は私からスマホを取り上げると真顔でメッセージを見つめた。  そして、ふたたび私にスマホを返す。 「通知をオフにして。ブロックはしないで。返事もしないこと」 「あ、はい」 「中身は見なくていいから、そのまま向こうから好きなだけ送らせればいいよ」 「えっ……?」 「証拠はあればあるほど有利になるからね」  あまりに冷静にそんな対応を指示できる月見里さんにびっくりしてしまった。
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