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それは3ヵ月ほど前のこと。
いつものようにスマホの着信通知を見て、うんざりした。
そこには『優斗の母』と表示されている。
「何時だと思ってんの? ほんと非常識にもほどがあるわ」
壁時計に目をやると朝の6時前。
放置したいのだが、あとでまた嫌みだらけのメッセージが立て続けに届くので、とりあえず出る。
「……はい」
『紗那さん、おはよう。今日は晴れていい天気よ』
「……そうですね」
そんなことで電話してこないでほしいんだけど!
こっちは出社前の修羅場なのよ!
「えっと、ご用件を」
『ああ、そうそう。同居の件だけど考えてくれた? 早くしないと挙式に間に合わないわよ。披露宴の準備に引っ越しも重なったら大変でしょう? なるべく早く行動しておかなきゃだめよ』
この話、朝6時からすること!?
「そのことですが、優斗くんと相談しますので少し待ってもらえますか?」
『まだ話し合っていないの? 大事なことを後回しにしちゃだめよ』
だったら息子に直接言ってくださいよ!
「すみません、お義母さん。お弁当を作らなきゃいけないので、この件はまたのちほど」
『あらそう。優斗にあまり揚げ物を食べさせないでちょうだいよ。うちでは健康管理をしっかりやってきたのだから。でも、紗那さんみたいな有能な女性なら安心して任せられるわ』
「ははっ……ありがとうございます。それでは失礼します」
『ああ、あのちょっと……』
ぷつんっと電話を強制的に終了させた。
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