6、つかの間のなごみ

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「おはようございます」  挨拶をすると、月見里さんは穏やかな笑顔で振り返った。 「やあ、おはよう。よく眠れた?」 「はい。おかげさまで。泊めてくださってありがとうございます」 「それはよかった。そろそろ起こそうと思っていたんだ。ちょうど朝ごはんができたところだから」  テーブルにはサラダとパンケーキ。じゃがいもを揚げたやつ。カリカリに焼いたベーコンとソーセージ。ヨーグルトのフルーツ添え。 「朝ごはんにしてはちょっと量が多すぎではないですか?」 「普通だよ。アメリカでは」 「ここ日本なんですけど」 「……そっか。味噌汁のほうがよかったかな」  いやいやいや。  話が通じねぇっ!!!  彼は何食わぬ顔でフライパンに卵を割り入れる。 「焼き加減はover easyでいいかな?」 「……日本語で言ってください」 「両面焼きの半熟」 「それでお願いします」  彼は慣れた手つきでフライ返しを使って目玉焼きの表面をカリカリに仕上げる。  以前、私の服を丁寧に畳んでいたことと部屋の綺麗さと今の料理の腕前を見れば、彼が家事を完璧にマスターしていることがわかる。 「君が顔を洗っているあいだにコーヒーを淹れておくよ。歯ブラシは新しいのを出しているから使っていいよ」 「何から何までありがとうございます」  待ってください、これ。すごい優良物件じゃないですかね?  どうして彼は独身なの!?
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