6、つかの間のなごみ

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「母親は会えない」  急にそんなことを言われて、どきりとした。  会えないって、何か複雑な事情があるのだろうか。それとも両親が離婚して会えないとか?  どこの家庭にも事情があるよね。うちだってあるし。 「そうですか」 「アメリカにいるから」 「え……?」  予想を大きく外れた。  物理的に会えないという意味だったんですね。 「月見里さんはアメリカ育ちなんですか?」 「半々かなあ。説明するのめんどくさいけど日本人だよ」 「そうですか」  なんだろう私、今この人のことがいろいろ知りたくなってきた。  何か特別な感情があるわけではなく、このちょっと不思議系イケメンがどうやって出来上がったのか単に興味本位で知りたい。 「アメリカにはどれくらい住んでいたんですか?」 「えっとー……」  彼はフォークを置いて斜め上を見上げ、しばらく考えつつ返答した。 「生まれたのはロスで、5歳で日本に来て、小学校高学年から高校1年まであっちに行って、高校から大学はこっちにいて、日本の国籍を選んで、就職後しばらく日本にいて、そのあとあっちで勤務して、ついこの前戻ったとこ」  結構なアメリカンだった。
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