6、つかの間のなごみ

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「すごいですね。グローバルというか、私には想像もできないです」 「大丈夫。俺、漫画も小説も読むから」  うん? これは日本文化に触れてる俺は完璧な日本人だよというアピールかな。たまに会話がズレてる気がするのは彼(の人生)が半々だからなのかな。 「へえ、そうなんですか。私、受験英語しか通ってないから会話できる人がうらやましいです」 「会話のほうが簡単なのにね。日本人はおかしいよね」  うん……いやみですかね?  私は今、会話苦手だって申告したよね。  いや、単に彼が素直だからかもしれない。  アメリカ人ははっきりものを言うらしいし、日本特有の空気を読むなんてしないのかも。 「ごちそうさまでした。朝食までいただいてありがとうございます」  朝からお腹いっぱいになってしまった。 「食器は私が洗いますね」 「ああ、いいよ。食洗器が洗ってくれる」 「……そうですか。じゃあ運ぶだけ」  とりあえず食器の汚れだけ水で流してあとはお任せした。  身支度をして出かけよう。今日こそは布団と最低限必要なものは手に入れておかなければならない。 「じゃあ、買い物に行きます。いろいろありがとうございました」  お礼を言って出かけようとしたら、彼がいきなり玄関前で迫ってきて、私は壁に追いやられた。  そのまま彼は私の顔の横に手をついて、顔を近づけてくる。  162センチの私とは身長差が20センチ以上の彼。 「え、えっ……あの」  困惑しながら(ちょっとドキドキしながら)見上げると彼は真剣な表情で言った。 「一度やってみたかったんだ。壁ドン」  どう突っ込めばいいんだーっ!!!
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