6、つかの間のなごみ

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 月見里さんが腕組みをして真剣な表情で話す。 「なかなか面白いことを言う母親だな」 「どこに面白い要素が?」 「浮気は蚊にかまれたと」 「頭おかしすぎてツッコミが追いつかないレベルです」  月見里さんは横目でちらりと私を見る。 「君は本当に苦労したんだね」 「ええ。もう、毎朝6時からこんな調子で電話してくるので困りました」 「めずらしいタイプだよね。そういうのは結婚まで本性隠すんだけど、彼も母親も正直すぎるというか」  まあ、たしかに。  本性が知れたおかげで結婚を逃れることができたのはありがたい。 「月見里さんのお知り合いの方もそんな相手だったんですか?」 「そうだね。もう結婚していたから別れるのに苦労したみたいだよ」 「そうですか」  月見里さんに出会わなければ、私もなんだかんだ我慢して別れられなかったかもしれない。  あのまま結婚していたら、本当に逃げ道がなくなっていた。  もしかして、最初にバーで会ったときに私がそんな話をしたから助けてくれたのかな?
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