1、私はただの家政婦ですか

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 朝から疲れた――。  しばらく床に座り込み、イライラする頭を落ち着かせてキッチンへ向かう。  毎朝、優斗と自分の弁当を作る。  それから簡単な朝食を作り、優斗を起こして、そのあと急いでメイクをして出かける。  これが私の日課だ。  昔から仕事で忙しい母の代わりに家事を担ってきた私には、優斗の世話もあまり苦ではなかった。  ただ、彼の母だけは少々苦手だった。 「はよー……」  弁当が出来上がった頃に、優斗がのそのそと起きてくる。  いつものことだ。  寝癖をつけていまだ夢と現実の狭間をうろうろしている彼に向かって、私ははっきり言いつけた。 「あなたのお母さんから電話があったんだけど」 「まじか……母さん早起きだからなー。仕方ないね」 「あのね、そうじゃなくて、早朝から電話してこないでほしいんだけど」 「ま、いいじゃん。お? 今朝はクロワッサンかあ。これ駅前のパン屋のだろ?」 「はぐらかさないで」  だいたい、共働きなのに家事すべて私って不公平。  けれど、優斗は家事とか料理が絶望的に苦手だ。  以前に私が体調不良のとき、ちょっと料理をお願いしたら渋々やってくれたけど、彼は包丁で指を切ってしまった。  そのときの嫌みがまたすごかった。 『ほら、指切ったじゃん。怪我するくらいなら最初からしないほうがいいんだって。こういうのは上手な人がやるべきだ。俺はその分仕事するからさ』  などとぐちぐち言うからもう諦めた。  こっちはあなたより遅くまで仕事してますけど!?
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