7、毒にやられまくった日

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 実家に帰ったのは、優斗との結婚の挨拶のとき以来だ。  父は喜び、母は優斗に対してよそ行きの笑顔を向けていた。  そして今日、私は神妙な面持ちの父と不機嫌な母の目の前にいる。  母が大きなため息をついて私を睨みつけてきた。 「破談ですって? あなた、いったい何をしたの?」 「私じゃないよ。やらかしたのはあっちだよ」 「言い訳なんか聞きたくないのよ。ああ、洋ちゃんがこの状態であなたまで……どうしてお母さんを困らせるようなことをするのよ」  洋ちゃんとは兄のことだ。  どうやら兄は仕事を辞めてここ数か月ひきこもりらしい。  母はせっせとお世話をしていたようだが、最近兄がキレることが多くなり、母は相当参っているようだ。 「親戚になんて言えばいいのよ。破談を報告しなきゃいけないお母さんの気持ちがあなたにわかる?」  母の言葉にただ「ごめんなさい」と言うしかなかった。  だけど、ほんの少しでも、大変だったねって言ってもらえるかもしれないなんて無駄に期待してしまった。  私はいつだってこんな扱いだ。  わかっていたはずなのに、胸が苦しくて泣きそうになった。
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