7、毒にやられまくった日

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「ま、まあ、母さん。落ち着いて……」 「落ち着けるわけがないでしょ!」  父がなだめようとしたが、母はぶち切れて声を荒らげた。 「だいたい、あなたのせいで洋二があんなことになったのよ! せっかく高い学費払って大学まで出してあげたのに、一流企業をこんな簡単に辞めるなんて!」 「そ、そうだな……」  父は母に強く言えない。  困惑しながらなんとかなだめようとするが、毎回失敗している。  母はヒステリックに叫び続ける。 「いつもそう! 洋二は習い事もすぐに辞めてしまうわ。あたしがこんなに愛情こめて育てたのに、いつもあの子は裏切るのよ!」 「お、落ち着いて」 「あたしがパートで働いたお金をぜんぶあの子のために使ったのよ! あなたの稼ぎが少ないせいでね!」 「うっ……それは、申し訳ないと」 「それなのに、あの子は私に向かってお前って言ったのよ。お前って! 親に向かって! 恩を仇で返す子になってしまったのよ!」  母は恐ろしい形相でまっすぐ私を見つめて訴える。 「どうしてこんなことになったの? 洋ちゃんは反抗期のない良い子だったのに、どうして?」  母はわああっと泣きながら手で顔を覆った。  父は狼狽えながら、私を見てごめんごめんと手を合わせる。  私はただ、無言で母を見つめるばかり。  今、私の話をしているのに……。
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