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家を出たら雨が降っていた。
きっと通り雨だろうから少し待っていればすぐやむだろう。
けれど、もう実家に1秒もいたくなかったから、私は雨の中を歩いた。
ずぶ濡れの状態で電車に乗り、着いた頃には雨はやんでいた。
新しく入居したマンションに帰り着く。
私の部屋は10階だけど、エレベーターで15階を押した。
ぼんやりしながら足が向いて、インターフォンを押したらすぐに、月見里さんが出てきた。
彼は私を見て驚いた顔をした。
「何かあった?」
「あー、えっと……ケジメつけてきました」
ぼんやりした頭でそう言うと、彼は笑顔で言った。
「そう。頑張ったね」
やばい。これはやばい。
ずっとギリギリのところで破裂寸前になっていた私の心は、彼のたったひとことで崩壊した。
「泣いても、いいですか?」
言っている途中に涙がぼろぼろこぼれて、たぶん顔はぐしゃぐしゃになった。
嗚咽を漏らす私の頭を彼は撫でてくれた。
そうだ。私はこうやって誰かになぐさめてもらいたかったんだ。
「寂しい……寂しくて寂しくて、死にそうです」
「大丈夫、大丈夫」
彼はそう言って私の頭をなでなでしてくれた。
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