8、解毒されました

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「やば……涙腺、ゆるすぎ……」  ぐしゃぐしゃの顔をさらしたり、ティッシュで鼻をかんだりと、あまりに不格好な姿を見せてしまって恥ずかしい。  けれど、彼は親切にティッシュの箱を「はい、思いっきりかんで」と手渡してくれるので思わず笑いが洩れた。 「変な人」 「そう?」 「かっこつけたりしないんですね」 「かっこつけるよ。女性の前では」 「それどういうことですか? 私は女じゃないってこと?」 「君は特別」  冗談で言ってみたら意外な返事をされた。  酔いがまわってその意味がいまいち理解できなかったけど、なるほどそうか。わかった。  初対面の私がぐずぐずの状態だったから、この人はビジネスモードの私を知らないんだ。  今さら取り繕う必要もないせいか、私も気持ちが楽でいられる。 「私、あんまり人に甘えたことないんです。甘えちゃだめだって刷り込まれてるから。でも……」  おかわりを飲み干してグラスをテーブルに置くと、自分でも意外なほど素直な言葉が口から出た。 「今、とっても甘えたい気分です」
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