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「あなたやっぱり、傷心の私をからかって楽しんでいるのね」
「まさか。真面目に君をなぐさめているつもりだよ」
体が熱くてドキドキが止まらない私に対し、彼は涼しい表情をしている。
それがまた、妙に腹が立つ。
だけど、悪くない。
それどころか、最高に心地いい(酔ってるせいだきっと)
「このあいだの続き、する?」
「え、このあいだって……」
彼は言葉にすることなく、ただじっと私を見つめる。
言わなくたってわかる。
ホテルに行ったあの夜の続きだ。
今の私は一応フリーの身だし、なんら問題ない。
だけど、こんな負の感情いっぱいでそんなことをしていいのだろうかと思ってしまう。
「早く言って。ほら」
「何を……」
「名前」
そんなふうに言われたら余計に言えない。恥ずかしい。
「名前とか、別に、関係なくないですか?」
「あるよ。君を抱いているあいだ名字で呼ばれたくない」
「だっ……!?」
もうだめだ。
完全にやられている。
傷心の状態でお酒を飲んではいけなかった。
だって、私の心はもう彼に持っていかれてしまったから。
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