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「それは、確かにお父さんの言われることも一理あるねえ」
正月用にネットで大量に買い込んだ残りの日本酒を傾けながら奏人さんは笑った。
「確かに、きみはまだバイトだけど、自分で働いて欲しいものが手に入れられる今だから、人に買ってもらえる特別感というのはあるだろうね。子供の時とまた違って」
「けど、俺は別に欲しいものなんてねーし」
「本当に何も無いのかい?」
改めて言われると困る。
去年は、いい加減新しいのを使えとこの人からはマフラーをプレゼントしてもらったけど。
「……だって俺、もともと物欲ないしさ。それに……」
「それに?」
「……言わなくても分かるだろ」
少しだけ注いでもらった酒を飲み干す俺を見て、奏人さんは笑う。
「でもね、周りは、大切な相手の大事な日には何か贈りたいものだよ。きみだってそうだろう?」
この人の誕生日には、好きな酒を贈った。
いわく
「飲んだら無くなるものだけど、でも残るものというなら、きみの他に何も要らないし。きみの代わりになるようなものも無い。一緒に飲んで、楽しい時間が過ごせたらそれでいい」
と。
それもわかるけど。
もう、一番欲しかったものがそこにある今、更に欲しいものといえば
「……俺は、誰にも邪魔されずに、あんたとこうやって過ごせたら、それでいいんだよ」
それしかないけど、それが一番難しいと思うから悩む。
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