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 奏人さんは首を傾げ苦笑いを浮かべる。 「やたら欲しがるのも困りものだけど、何も欲しくないというのも厄介だねえ」 「……まあ、敢えて言うなら」 「うん?」  口に出そうとしたそばから恥ずかしさが来て、唇が動かなくて隠すように手を当てた。 「匠海。耳が赤くなってるよ」  う……。 「……だってさあ……っ、それしかねーもん。俺。あんたから欲しいものつったら」  奏人さんは溜息をつく。 「僕が女性なら、私の体にしか興味ないのね、ってとこだね」 「は!?いや、そうじゃねーよ!……そんなんじゃないけど、その……いや、その前に俺たちの場合、逆じゃね?」 「利用してるのは同じことだろう?」  からかうように言って奏人さんは笑う。 「僕を利用して快楽を得ている点では、そういうことじゃないかい?」 「ちが……」  いや。違う、とも言い切れない。 「え……そうなの?……そんな風に思ってたの?」 「思ってないよ。からかっただけだよ」  くすくすと、おかしそうに笑って酒を傾ける。 「恋人に求められて、嫌なわけがないだろう」 「……おどかすなよ」 「ふふ。けどまあ、僕がきみにあげられるものなんて、実際そのくらいしかないだろうしね」
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