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「お疲れさまでした」  2つだけの試験も無事に終わり、バイトに復帰して。  下の学年はまだ休んでて人手が足りない分、普段よりは忙しい遅番を終えて帰り道を歩き出した時 「鳴瀬君!ちょっといい?」 女の人の声がして、呼び止められた。  振り返る前から相手が分かったのは、俺が入る前からのベテラン社員さんだからだ。 「理沙さん。お疲れさまです。何かありました?」  職場に同じ苗字がいるので皆名前で呼んでいる、細身でショートカットの女性は小走りに俺に追い付くと、見上げて言った。 「ごめんね。つかぬこと聞くけど、鳴瀬君って甘いもの嫌いじゃないよね?」 「あ、はい」  見ると、手袋をした手には何か紙袋を提げていた。 「お家の人も嫌いじゃない?」 「はい。まあ……」 「で、今月誕生日だったよね?」 「……はい」  特別親しい訳じゃないけど、四年目にもなれば知ってる奴は知ってるから、誰かに聞いたんだろう。 「じゃあ、申し訳ないんだけど、これもらってくれないかな?焼菓子の詰め合わせなんだけど」  その紙袋を差し出して理沙さんは言った。 「えーと……?」 「あのね、あたしも今月誕生日で、店長がくれたんだけど……ちょっと今都合が悪くて」 と、理沙さんは苦笑いを浮かべる。 「で、鳴瀬君も確か今月だし、いつも後輩の面倒とか頑張ってくれてるから、どうかなと思って」
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