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 突然のことで驚きはしたけど、この人が言うなら言葉以上の裏はないんだろうと思った。  理沙さんは年は確か30前後、良い意味であまり女っぽくない、女性の嫌な面の見えない人で、上司としてもやりやすいし、古株なので今の店長の片腕のように信頼されてもいる。  俺と同じでプライベートについてはほとんど喋らず謎だけど。  考え、俺は答えた。 「……ええと……俺がもらっていいのか分かりませんけど、理沙さんが困ってるならもらいますよ。多分うちの母、そういうの好きだし」  理沙さんは、ホッとした表情を浮かべて言った。 「ありがとう。助かる。じゃあ、これ。お菓子自体はすごく美味しい、いいものだから」  差し出されたのを受け取り、俺は頭を下げた。 「すいません。……けど、いいんですか?本当に全部」 「うん。一人じゃ多いし、それに……店長からもらったものを休憩室に置いといて皆で食べてってわけにもいかないじゃない?」 「……確かに」 「だから、口のかたい人が箱ごともらってくれるのが一番助かると思って、それで鳴瀬君に。ごめんね」  ……そりゃ、まあ、俺は余計なことは言わない方だけど。 「分かりました。じゃあ」 「ありがとう。あ、鳴瀬君、地下鉄だよね。あたしもだからそこまで一緒に」  この人も確か実家暮らしのはずだけど、家の人、食べないのかな……。
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