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1.「きちんとパートナーの事は知っておこうと思いました。」
本日の喧嘩の原因は、葉介が部活の試合帰り、会場からの帰り道の途中から他校の女の子と帰ったことだ。流れとはいえ、二人きりで帰ったという意味である。普段であれば恋人の笑実も、相手の子が、葉介の友人にぞっこんな女の子であったので、「ああ、多分本当に流れなんだろうな」 と、思えたかもしれないが、生憎今日は、月の物──生理がきている日で機嫌がよろしくなかった。
どういうこと!? と、女の子と別れて帰り際にばったり会った際、葉介は詰め寄られる。やけに目が荒んでいた。おまけに、お腹を押さえて、苦しげに睨み上げてくるのだ。アーこりゃまずい、と葉介は直ぐ察した。生理中の体調不良でヒステリック。情緒不安定気味になっているのだ、と。
生理や生理前に、女性の大半が悩まされているということは、付き合いだしてから苦労を笑実に切々と語られ、葉介も知っていた。一人っ子だった葉介は、子供を産むために、毎月そんなに大変なのに生活をするなんて、すごすぎとしか言えねえ。と、素直に感じていたし。強がりな彼女だけれど、出来る限り支えられる男の前に、思いやれる人間にもなろう・とも、切実に。真摯に、思っていた。
が──その詰め寄られたとき咄嗟に、保健体育の授業で半分寝ながら、生理が来なくなる現象を思い出した。耳に入れ、ふぅんなるほど、と聞いてまた寝てしまったのだが、今度、笑実が生理で辛いとき、話して試してみるかと。昼食後のまどろみの中で思ったわけであったが。
「笑実! マジ、誤解だ。とりあえず、部屋行こう? もう、身体冷やしたら駄目だし。ここじゃ、さみーしさ。あと、生理来なくする方法、苦しむ女に男が居れば出来るって、保体授業で習ったから!」
悪気ゼロのアホ丸出しな葉介が、笑顔でそう言うと、笑実は惚けて目をぱちくりさせた。な? と葉介は落ち着かせようと必死だったが(生理中どうしても言い合うのも折れてしまう)、次第に赤くなって。おまけに、わなわな震え。
ばっちん!
と、笑実は葉介の頬を叩いた。……つまり、ビンタした。
「さいってー! フラれたからって、今カノのわたしに直ぐ乗り換えるんだそうなんだ!」
バカ葉介! ヘンタイ! もう知らない! ──そう言ったあと何度も捨て台詞を吐いて、大股で耳まで真っ赤になりながら笑実は歩いて行ってしまった。ビンタをされた葉介は呆気にとられていたが、家に帰って教科書を読みなおすと。それは性行為。セックスで子供を授かり、結果、「一時的に」生理が来なくなるという話だった。
(もっとちゃんと授業聞けばよかった! 笑実の言う通り、俺のバカ!)
その通り、お前はバカというより、抜けている惜しいタイプである。きちんと授業を聴いて、パートナーの事は更に本人に聞いておこうね。
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