7.「魔法の料理ってやつ?」

1/1

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

7.「魔法の料理ってやつ?」

「ピーラー使えば楽だろ?」 「だって、なんかさ。葉介が包丁で本当に綺麗に皮剥けるのに、わたしに出来ないなんて」  悔しかったの。ほら、食べよう。そう言って笑い、もうコツ掴んだから怪我してないし。と笑った。「おなかすいてお腹と背中くっつきそう」 「はは。くっつけてみろ」 「葉介とお母さんの料理だけだよ、こんな気持ちになるの」 「どんな?」  いただきます、と両手を合わせて、必ず挨拶。そこから初めにイビツな形の里芋を口にした葉介は、うまい。と、考えるより前にすぐこぼしていた。笑実は満足げに微笑んで頷き、いただきます。と言ってスプーンでカレーグラタンに息をふきかけつつ、口にしてもぐもぐと食べると。おいしい。と、やはり考えるより前に言葉として出ていた。 「なんかね。よくわかんないけど、魔法がかかっている、料理だなって。目の前に出されると、余すことなく食べたい! って思っちゃうっていうか。だから体重計乗るの、ちょっと怖くなっちゃうし。でも、お腹すくと目が回る、わたしを知ってるから、いっつも良いタイミングでおいしいものを出してくれる二人が、大っ好き!」  父さんも料理は好きだけどね。「好きなだけで、まだ、わたしと同じ練習中だから」そう言ってくすくす笑うと、愛情感じて食えば美味いだろ、と葉介も思わず笑んで頷く。  ふたりの箸やスプーン、フォークが使われる手は、その間も似たように動き続けて、もぐもぐと口だって動いている。動いてばかりのふたりきりの夕食は、いつもこうで。葉介の手料理を食事の合間の話している時間が、お互いのなかで一番楽しいと、口をそろえて言うのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加