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私は中に戻りました。私は床に就いて考えました。捨てるのは無責任、元はと言えば他人の無責任からこうなったのですが、私が真似ればほら同じだと笑われます。それにあの鬼婆の世話になるのは絶対に避けなければなりません。相談に行ったときに他人事と追い返した役所の無責任にも腹が立ちます。私は責任ある解決策を模索しました。私が死ねばこの猫達はどうなるだろう。納戸に山のように在庫があるキャットフードを上げなければ子猫達はどうなるだろう。そうです、餓死です。それなら私がしっかりしているうちに葬ってあげるのが責任ある飼い主の姿ではないでしょうか。私が、飼い主が、責任を持って処分する、そして葬る。一石二鳥の策が頭に浮かびました。それも私の心構えが緩む前に実行しなければなりません。陽がくれて来ました。私はドアと言うドア、窓という窓を全て締め切り鍵を掛けました。これで家の中や屋根裏にいる猫グループは外へ出ることが出来ません。縁の下のグループは仕方ありません、野良猫として生きていくでしょう。納戸から大量のキャットフードを出しました。各部屋にぶちまけました。子猫達は喜んで食べ始めました。しかし口の肥えた大人の猫は見向きもしません。石油ストーブを逆さまにして灯油を布団に染み込ませました。火を点けると燻っています。焼け付く前に一酸化炭素中毒で死んでしまうでしょう。猫は大騒ぎしています。二階の叔母の部屋に入ると玉が睨んでいます。大は飛び掛かって来る様相です。オルガンの上に居並ぶ猫を手で追い払いました。叔母は近所の子供等にオルガンを教えていました。私が弾けるのは唯一猫ふんじゃったです。それも弾くと言うより人差し指一本で鍵盤を叩くだけです。
「さあ、ご主人様と一緒にこの世の責任をとりましょう」
足元が熱くなってきました。布団から壁、天井と火の手が上がっているのでしょう。猫共はギャーギャーと大騒ぎしています。ライバル関係のグループが喧嘩を始めました。
「こんな時に喧嘩をするな、みんな一緒になって責任ある行動をしよう。これだけの猫が散らばれば近隣のみなさんに迷惑が掛かる。私が最後に演奏しよう」
鍵盤を叩きました。煙で視界が消えました。
「♪ネコ ふんじゃった ネコ ふんじゃった ネコ ふんじゃーふんじゃーふんじゃった」
子猫がバタバタと倒れていきます。可哀そうだけど悔いはありません。私が飼っていた猫は私自身が処分しました。捨てる人の気が知れません。
了
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