4人が本棚に入れています
本棚に追加
ガラス戸を開けるとさっと入り玉と共に二階の叔母の部屋に上がって行きました。それから三か月後のことでした。私は叔母の部屋にはあまり入りませんでした。玉と大で好きに使っていました。二匹とも大人でそれもおとなしく部屋を汚すこともありませんでした。トイレは勝手に外で済ませてくれる、餌はきれいに食べ残さずに食べてくれる。週一に掃除機を掛ける程度でした。それが泣き声がするのです。上がってみると叔母のベッドに子猫が六匹いました。蹲りにゃーにゃーと鳴く子猫に近付いたら嚙み殺すぞと言わんばかりの玉が私を睨み付けました。玉が雌であることを初めて知り、大が雄であることも始めて知りました。雌雄の猫が一緒にいればこうなることに気付かない私が失格でしょう。私は責任を持って育てる決意をしました。獣医に頼んでこれ以上増えないように大を去勢してもらいました。
子猫は順調に育ちました。親と変わらぬ大きさになり食欲も旺盛です。玉と大の二匹の時は部屋も荒らされずにいましたが遊び盛りの猫がじっとしているわけもなく、叔母のベッドは無残にも穴が開いてしまいました。空いた穴から入り込み出れなくなった一匹を引っ掻かれながらも助け出しました。生まれたばかりに名前を付けましたが、その特徴は薄れて、今やどれがどれだかさっぱり分かりません。おいとか、こらとか呼ぶとみながこっちを向いて耳を立てる仕草に笑ってしまいます。
猫が増えると近所の小学生が学校帰りに遊びに来るようになりました。
「おじさん、猫と遊んでもいい?」
断る理由はありません。
「いいよ、でもなるべく早く帰るんだよ。お母さんとお父さんが心配するからね」
子供達は二階に上り猫とあそんでいます。一人の子が猫に顔を引っ掻かれてしまいました。
「うちの子をどうしてくれるんだ?」
父親はやくざ風に見えました。大した傷ではありません、一週間もすれば消えてしまうような細い引っ掻き傷でした。
「薬代を出しましょう」
「薬代だと、病院に連れて行くんだよ明日、俺が仕事を休んでな」
父親は金が目当てであると分かりました。
最初のコメントを投稿しよう!