逆さ男と笛吹き男

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「七草粥を作ったから食べにおいで」 と 母方のばあちゃんから電話が来た 「行っておやり」 と 母に言われ せっかくの三連休なのに 仕方なく出かけた 僕は札幌の実家から 特急電車に乗って 3時間くらいかけて 旭川のばあちゃんの家まで行き 七草粥を食べた 「わざわざ すまないねー  早く帰らないと暗くなるから  もう お帰り・・・    」 食べたばかりなのに ばあちゃんは そう言って 僕に お小遣いを手渡した 赤い紐が結ばれた絵が 印刷された  小さな のし袋を覗くと 一万円札が3枚 入っていた 僕はもう39歳の社会人だが ばあちゃんにとっては 永遠に 「めんこい孫」らしい ばあちゃんは帰り際に 「レイちゃんは結婚する気  ないのかい?」 と 僕に聞いた 「あるよ」 と 僕は答えた 「今は お見合いなんて  しないものかい?」 「いや 今まで 99回  お見合いして 99回  フラれたよ あはは 」 「なんで?」 「なんで って   まあ いろいろ事情があんだよ」 「不思議だね おまえの何が  いけないんだろうか?」 「しゃあ ねぇんだよ  僕ぁ 変人だからさ」 「レイちゃんは 変態じゃないよ  むしろ バカ真面目だからね  仕事ばっかりしてたら  病気になるんじゃないかと  ばあちゃんは それが  心配なんだよ  そうだ  うちの隣りの お嬢さんは  どうかねぇ  美人さんだよ  百人目の正直って   ことわざ あるだろう?」 「ねぇ〜よ そんな ことわざ」 「今 いるかなぁ  ちょいと 電話してみよっ!」 「いや そんな 急に、、  僕 そんなつもりないから  スーツとか着て来てないし」 「いいんだよ   かしこまった感じじゃなく  ちょいと 遊びにおいで〜  みたいな ノリでさぁ〜 」 「今日は やめとこ!  七草粥と 七草雑煮  たらふく食って  お腹 苦しいしさ  お見合いするなら  それなりに いろいろ  準備したいんだ  そんな美人さんなら  なおさら ビシッと  決めてから・・・」 「何を言っとるか  それで今まで 99回 フラれたんなら  今度は カッコつけないで  裸の心で 会ってみなさい 」 「確かに 一理あるな」 ばあちゃんは いきなり 電話をかけた 「あ ゆりちゃん?   マオちゃん いる?   えっ? 犬の散歩に行った?  すぐ帰って来るんでしょう?  あら そんなに かかるの?  いや なに ちょいとね  今 うちの孫が遊びに来てて  ああ そうそう   この前 話した  札幌の会計事務所で働いてる  39歳の アレだよ  マオちゃん 美人だよー  って 話したら さぁ  そんなキレイな人がいるなら  会ってみたいって言うからさ」 「おい ばあちゃん  勝手なこと 言うな」 僕は 焦って ばあちゃんが電話してる間に そそくさと ばあちゃんの家を出た 午後2時半頃だった
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