世界一のお婿さんになりたい!

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 僕は猛勉強を始めると同時に、少年サッカークラブにも入部し、練習に励んだ。  その甲斐あって成績は急上昇。サッカー部でもレギュラーに選ばれるようになった。小学校高学年になる頃には、僕は女子から注目の的になっていた。  良し! 夢に一歩近づいた!  僕が充実感を覚えながら、休み時間に算数ドリルを解いていると、隣の席でユナは強引に他の女子から宿題を写させてもらっていた。僕はほくそ笑んだ。  バカめ。世界一のお嫁さんはそんなに甘い夢ではない!  中学生になると、僕は女子からちょくちょく告白されるようなった。でも、僕はもちろん全部断った。僕の夢は世界一のプレーボーイになることではない。世界一のお婿さんは一途でなくてはだめだ。運命の人に出会う日までは辛抱なのだ。  オシャレも大事だとこの頃気づいた僕が、自室の鏡の前でジャージの襟を立てた方が良いかどうかで悩んでいると、玄関先で母親が近所の人と立ち話をしているのが耳に入って来た。 「ユナちゃんもう彼氏ができたんだってね!」  愚か者め。中学生のときに付き合った彼氏が将来結婚なんてしてくれるものか。やはりユナは世界一のお嫁さんにはなれないな!  そのまま僕は学業、スポーツ共に優秀なまま都内有数の名門高校に合格した。休み時間にクラスメート達が医者とか弁護士とかアナウンサーなど将来の夢を語ったとき、僕も自分の夢を話してみた。小学校、中学校と理解してもらえない僕の夢ではあったが、頭脳明晰な彼らならわかってくれると信じたからだ。  しかし、皆キョトンとした表情を一瞬浮かべてから爆笑の嵐。茫然とした僕にクラスメートの一人がポンと肩に手を置いた。 「マサルって頭良いと思ったけど、案外バカなんだな」  しかし、僕は挫けなかった。バカはどっちだ。愛する人を世界一幸せにできる人間になるという僕の夢は、最も幸せな人生に直結している。例えば医者になれたって不幸な人間はいるはずだ。しかし、世界一のお婿さんが不幸になるわけがない。なぜなら、世界一のお婿さんは世界一のお嫁さんと結ばれるはずだからだ。
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