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国費留学生としてアメリカの大学に僕は留学した。そこでも様々な国籍の女性からアプロ―チをされたが、踏み切れなかった。国際結婚はリスクがあり過ぎる。
どんな女性にも心を動かさない僕にルームメートのロバートが言った。
「俺、実はゲイなんだ」
僕は即刻部屋を出た。
帰国後、大学を卒業すると一流企業に僕は入社した。その頃になると誰とも付き合わない僕を両親が心配して、病院に行くように勧めだした。しかし、僕はそれを断ると、働きながら料理の専門学校に通い始めた。やはり世界一のお婿さんになるには家事も世界一でなくてはならない。
ある日、料理の勉強のためそば粉を買いに近所の食料雑貨店に行ったが、目当てのものがない。
「すみません。韃靼そば粉であまり苦みが強くないものを探しているんですが……」
すると店員は驚いたような表情を浮かべた。
「マサル君、久しぶり! そんなの探して蕎麦屋でも始めるの?」
ユナのお腹は大きかった。僕も驚きつつ言った。
「……幸せそうだな」
「だって私は世界一のお嫁さんだもん」
そう微笑むユナに、生まれて初めて胸が鷲掴みにされるのを感じた。気づくと僕は普通の徳用そば粉の袋を持たされて立っていた。陳列棚の向こうにユナが忙しそうに去って行く。
「本当に世界一のお嫁さんになったんだな……」
気づくのが余りにも遅かった恋に、僕はそば粉を抱きしめてその夜眠った。
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