世界一のお婿さんになりたい!

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 しかし、僕もまだ自分の夢を諦めてはいない。出世街道をひた走りながら、児童心理学を通信教育で勉強し始めた。無論、結婚して子育てするときに備えてのことだ。そんな僕はまだ誰とも付き合ったことがないのだった。  ある日重役から呼び出されて、娘を紹介したいと言われた。才色兼備でフランスの有名ブランドのデザイナーをしているという噂は聞いていた。 「娘は今度転勤で日本に帰国することになったんだが、ヨガに凝っていてね。ヒンズー語を勉強しているそうなんだ。君、堪能なんだろ?」  こんなところでヒンズー語が役に立つとは!  重役に見せてもらった写真にはモデル並みのルックスの大和なでしこが写っていた。僕は胸がときめくのを感じた。彼女の直接の友人である同僚からも話を聞くと、とても優しくて朗らかな人で、お嬢様ぶったところが全くないお淑やかな性格ということだった。  やはり天は僕を見捨てなかった!  二十代も間もなく終わるというのに、結婚どころかまだ誰とも付き合ったことがない。「もう夢は諦めるべきなのでは!?」と悲愴な思いに駆られながら、まだ見ぬ伴侶のために女性の更年期障害について勉強している最中でのことだった。  浮かれながら鼻歌混じりで帰宅している途中、スマホに着信があった。ハッと目を見開いて出る。 「マサル君、久しぶり。急にゴメン。ちょっと会えない?」  ユナからの電話に僕は慌てて駅へと戻った。
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