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「僕の将来の夢は世界一のお婿さんになることです!」
小学二年の国語の時間、その作文を読み上げると、クラス中が静まり返り、次の瞬間ドッと笑い声が巻き起こった。
僕がなぜ自分が笑われているのかわからずうろたえていると、担任の女性教師が優しく声を掛けて来た。
「マサル君、もうちょっと夢を大きく持ったらどうかしら?」
「世界一のお婿さんは十分大きな夢じゃないでしょうか?」
「でも、お婿さんって……」
「お嫁さんなら良いのに、お婿さんは許されないんですか? そんなの男女差別だと思います!」
担任教師は小さくため息をついた。
「そうね。先生、マサル君の夢を応援してるわ」
絶対応援してないだろ!
僕が内心憤りながら座ると、隣の席のユナが僕を鼻で嗤った。
「マサル君って頭良いのにバカだよね」
ユナは見ようによっては可愛いルックスだけど、性格はいい加減さ百パーセントみたいな女子で僕は好きじゃなかった。
「大きなお世話だよ! そんなこと言うなら、ユナはすごい夢を持ってるんだろうな!」
すると、次に担任教師はユナを指した。ユナは立ち上がるとしれっと作文を読む。
「私の夢は世界一のお嫁さんになることです」
僕は内心嘲笑った。
こんな適当な奴が世界一のお嫁さんになどなれるわけがない。
翌日から僕は夢に向かって走り始めた。世界一のお婿さんになるのだからハイスぺ男子にならなくてはいけない。勉強を頑張って良い大学に行ってエリートになるのだ。もちろん、スポーツもできなくてはダメだ。やはり女子にとってスポーツができる男子は本能的に魅力的に違いない。
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