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第十一話
「このままただ逃げていたんじゃジリ貧でごわす。だからおいどんたちは途中でコースを外れてあの化け物を引き付けるでごわす」
六人と合流後、男児が一つ提案した。その作戦に合流した六人も顔を見合わせる。
「確かにこの先でコースを外れることは出来るがそれはルール違反ではないのか?」
異を唱えたのは万能だった。確かに本来の規則ではコースを外れる行為は失格対象となる。
「おいおい。この状況でルールもクソもねぇだろうが」
これに呆れ顔で意見したのは火神だ。確かに今やっているのはもはや競技とは言えない。命を賭けたレースなのである。
「勿論わかっている。だが忘れたかあの鶏頭は助かるにはゴールするしかないと言った。逆を言えばこんな状況でも奴はルールを意識していると言えるだろう。それであれば勝手にコースを外れてあの鶏頭が何を仕出かすか」
「その心配は不要と思ってるでごわす。何故なら奴が言ったのはゴールしろということだけ。コースの指定などはなかったでごわす」
男児が持論を提案した。確かに彼の言う通りルーズ上でコースについての言及はなかった。
「たとえ一旦ここからコースを外れても大回りで元のコースにも戻れるでごわすからゴールするだけなら問題ないでごんす」
「しかしそれが間違いないとは言い切れないのでは?」
考えを述べる男児だがここで声を上げたのは大頭だった。確かに最初に説明されていないからといってコースを外れて良いのかという疑念はあるだろう。
「たしかにそうでごわすが――良く見るでごわす。あの巨大鶏は勿論奴らは食べた分だけ卵を生んでいるごわす。その結果他の鶏も増えてきている。鶏の群れにも多くの選手が喰われた……このまま纏めて相手していてはいずれ耐えきれなくなるでごわす」
「なるほど。確かに一理あるね。一か八かではあるけどここで二手にわかれて敵を分散させるのはいい手だと思うよ」
雁須磨も男児の提案には乗り気なようだった。話を聞いていた他の五人もそれぞれうなずく。
「わかったその手で行こう」
「よかったでごわす。それならば言い出しっぺのおいどんが――あの巨大鶏を引くでごんす」
「あいつを? しかし行けるのか?」
「あの巨大な鶏は目の前の餌に対してやたら貪欲でごわす。上手く引けば分散できる」
男児が考えを示した。どうやら追いかけられながらも男児は男児で考えを巡らせていたようだ。
「ははっ、だったらその役目この僕にも手伝わせてくれるかな?」
雁須磨が名乗りを上げた。
「いいのか?」
「ふふん。この僕のカリスマ性があれば巨大な鶏だってイチコロさ。きっと僕の方に来てくれるのさぁ」
髪をかきあげ雁須磨が言った。この自意識の高さも彼の特徴だが決して嫌味はなくだからこそ高いカリスマ性を発揮している。
「それならここから半分にわかれよう。俺はこっちの囮組に入る。同じチーム同士の方が連携も取りやすいしな」
万能が言った。彼は男児や雁須磨と一緒に別ルートを征く考えなようだ。
そして更に蒼海の一年の一人が加わった。逆に正規ルートは火神と大頭と残りの一年が行く。
「よっしゃーーーー! 僕についてきたい人はこっちにくるっしょ!」
雁須磨が叫び残った選手の半分程度が男児側についた。残った半分は火神や大頭が引く形となる。
「よし勝負でごんす!」
「オッケー! へい鬼さんこっちら~!」
『コケェエエェエエェエエエエエエエ!』
雁須磨が巨大な鶏に向けてお尻をペンペンして挑発しつつ後方に下がった。
男児の言うように巨大鶏の正面に出て引きつけようという魂胆だ。勿論簡単な話ではないだろうが――
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