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第十五話
「く、くそ! 軍鶏まで出てくるとは!」
大頭が人間を軽く引き裂くサイズの軍鶏を見ながら憎々しげに呟いた。
闘鶏でも使われるだけあって軍鶏の戦闘力は高い。これまでの鶏でさえ厄介だったというのにここに軍鶏まで加わっては手のつけようがなかった。
「へっ。情けねぇ情けねぇ。やっぱルールの上でしか物事考えられねぇ奴は駄目だな。おいお前ら一丁かましてやれ!」
黒井が号令を掛けるとチームメンバーが個々に準備を始めた。それに大頭と火神が目を白黒させる。
「お、お前らレースに一体、一体何を持ち込んできてやがる!」
火神が叫んだ。それもその筈である。毒島の毒でさえ驚きだったが他の選手にしてもやってることはとんでもない。
まずサングラスをした角刈りの男が腕を伸ばすと袖から銃が飛び出した。それを両手で持ち彼はなんと軍鶏に向けて撃ちまくったのである。
「お、おいおい何でそいつ本物の銃を持ってるんだよ!」
「へっ。そっちはただの改造モデルガンだよ。ま、流石は弾道のお手製だけあって確かに本物と遜色ない出来だがな」
選手の疑問に黒井が答えた。それを聞き火神が目を剥いて叫ぶ。
「いや、威張れることじゃないだろうが! そんなもの持ってきて一体どうするつもりだったんだ!」
「決まってんだろう? 妨害だよ。流石にレースの試合で命を奪おうとはおもわねぇけど、ま目障りな選手の足を撃ち抜くぐらいはな」
悪びれもなく語る黒井に大頭や火神は勿論他の選手も言葉を失っていた。
しかもその直後後方で激しい爆発が起きた。これに巻き込まれた軍鶏の何匹かがコース上で倒れていく。
「それを投げたのは大輪那 翔だ。うち一番の罠の使い手だぜ」
ニヤリと口角を吊り上げる黒井。大頭は開いた口が塞がらないといった表情だ。
「お、お前ら一体何しにレースに参加してんだ!」
「あん? そんなの決まってんだろう。勝つ為だよ」
「こ、こんな真似して勝ってどうする。監督は何を見てるんだ!」
「悪いがこの手はうちの監督が推奨してんだよ。勝負は勝てば官軍ってな。俺らには俺らのやり方があるんだからそれを活かせってな」
この発言に頭が痛くなる火神であり。
「お、おいそれでも別の鶏が近づいてきてるぞ!」
「青髪の奴が喰われるぞ!」
「氷雨をなめんなよ――」
確かに軍鶏以外の鶏が氷雨と呼ばれた青髪の少年に迫っていた。だが氷雨は冷静に落ち着きを失わず右手を掲げた。
途端に右手が凍てつき、そして氷の刃と化した。これを利用し近づいてきた鶏の首を刎ねた。更に逆の手でもう一匹の鶏の首を掴むと鶏の頭が凍りつきそれを氷雨が凍てついた拳で砕いていた。
「な、なんだよあれ魔法かよ!」
「……違うこのグローブのおかげだ」
そう言って氷雨が手を掲げた。確かに彼はグローブをしていたが黒鬼以外の選手には仕組みがよくわからない。
「ジャージ自体が特殊なのさ。あの中に二本の管が入っていて一本には強力な液体窒素が循環している。そしてもう一本には過冷却水だ。これを組み合わせてグローブに流し込むことで一瞬にして氷の刃を作ったり鶏凍らせたりしてんだよ」
そう言って黒井が得意げに笑った。確かにやってることは卑怯だが、そのやり口は手が込んでいた――
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